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医師が刑事罰を受けたとき、続けてはじまる医道審議会の手順は

第1、医道審議会とは、医師が罰金以上の刑事罰を命じられ、あるいは、医事に関し犯罪又は不正行為を犯した場合(医師法4条)、さらには、医師としての品位を損なう行為があった場合に、厚労省が、当該医師の医師免許を取り消したり一定期間の医業停止を命じたりする際に(医師法7条2項)、あらかじめ意見聴取する組織です(医師法7条4項)。なお医師免許取消・医業の停止のほかに、戒告という行政処分や、行政処分に達しない厳重注意という行政指導もあります。
 医事に関する不正行為の典型例として、刑事罰に至っていない診療報酬の不正請求、医師としての品位を損なう非違行為の典型例として、報道され示談が成立した性犯罪などが挙げられます。

第2、医師に対する、行政処分などが刑事罰とは別に設けられている理由は、2002年12月13日発表されたガイドライン医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方についてという文書の中に《医療は生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師など医療の担い手と医療を受ける患者との信頼関係に基づいて行われるものであり、医療の担い手は医療を受ける患者に対し良質かつ適切な医療を行うよう努めるべき責務がある。また、医療の担い手は、医療及び保健指導を司ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保することを任務としている》ことを宣言したうえで、医師が罰金以上の刑を命じられた場合などには、医道の観点からその適性を問うべき状況に該当するからと記しています。

 たとえ医業以外の場面においても、医師が患者の生命身体を直接預かる資格であるため、他人の生命身体を軽んじたり法規を逸脱する行動をした場合には厳正な行政処分の対象となると公的に理由付けされているのです。

第3、医師が刑事罰を受けて有罪判決が確定した場合、略式・罰金・実刑・執行猶予のいずれであっても、法務省から厚労省に情報提供され、医道審議会の審査対象となります。
 医師の行政処分は公正公平に行われなければならないことから、処分対象行為の事実・経緯・軽重などを正確に判断する必要があるため、行政処分を決定するにあたっては、量刑や刑の執行が猶予されたか否かなど、刑事処分の中で確定した司法判断を参考とすることを基本とし、そのうえで、医師に求められる倫理に反する行為と判断されたときは、これを参考事情に決定されることになっています。
 例えば、わいせつ行為は、国民の健康な生活を確保する任務を負う医師は、倫理上も相応なものが求められるものであり、わいせつ行為は医師としての社会的信用を失墜させ人権を軽んじ他人の身体を軽視した行為であるから、特に診療の機会に医師としての立場を利用した犯行などは国民の信頼を裏切る悪質な行為として重い処分とするという方針が、ガイドラインに明記されています。
 そのほか、自動車運転による業務上過失致死傷罪については、医師や歯科医師に限らず誰でも予期せずおかすことがある行為類型であり、また、医師や歯科医師としての仕事と直接の関係はなく職業としての品位を毀損する程度も低いため、基本的には戒告などの取り扱いにとどめるが、他方、ひき逃げなど悪質な事案については戒告にとどめない行政処分の対象とする、とりわけ人のいのちや身体の安全を護るべき責務ある職業における倫理が欠ける場合には重めの行政処分とするという方針が、ガイドラインに明記されています。

第4、行政処分の手続において、代理人が活動するメインは、弁明聴取の機会に、理由と根拠を添えて行政処分を軽減するための、意見陳述です。
 弁明聴取の際は、例えば刑事判決後の再犯防止のための事情を資料として提出することで、できるかぎり処分を軽減していくよう求めるのが弁護方針となります。贖罪寄付もその1つです。

第5、医道審議会で行政処分が答申されると、速やかに厚労省が処分内容を決定し、氏名・病院名・処分内容・刑事事件の概要が報道機関に公表されることになります。
 その行政処分に不服があるときは、異議申立さらには行政訴訟という司法手続が保障されているものの、行政処分を取り消すことができる場面は著しい権限逸脱がある場合に限定されており、行政庁には広範な裁量が与えられているので、前提事実そのものが誤りというレアケースでなければ、行政訴訟で覆す障壁は非常に高いです。この意味で、刑事判決で有罪が確定して医道審議会の審査対象となった案件では、いかに行政処分の段階で可能な限り処分を軽減する措置を講じておくかが大事ということになります。具体的には、過去の同様の事案との異同を検討することがとても大事です。

菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を中心に九州エリアを対応しており、医療機関の法務支援に注力する現役の弁護士。
患者対応や労務問題、医療法規制への対応など、複雑化する医療現場の課題に対し、実務に即した助言を行っている。 日常的な相談からトラブル対応まで幅広く関与し、円滑な病院経営と働きやすい職場環境の実現をサポート。
医療現場への理解を強みに、地域医療を支えるパートナーとして迅速かつ誠実な対応を心がけている。
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弁護士歴(抜粋)
  1. 1992年司法試験合格
  2. 1995年福岡県弁護士会に弁護士登録
  3. 2004年整理回収機構 九州地区顧問 就任
  4. 2006年菅藤法律事務所を設立
公的役職歴(抜粋)
  1. 2010年~日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長
  2. 2010年~2013年福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長
  3. 2014年~福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長
  4. 2015年~福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員
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