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社団医療法人の相続、どういう事前対策が必要か

第1、はじめに
 医療機関では、医師以外の家族も理事に就任して役員報酬を支払う日常の税務対策を行うために、医療法人を設立していることがほとんどです。
 そして、医療法人では、代表理事である医師が連帯保証人となって高額なリース機械や電子カルテなど運営のためのリース料をかかえたり、看護師や療法士などたくさんの専門スタッフを抱えることによる日々の経費も非常に多いのですが、半面、医療収入というのがコロナ禍など歴史的な事件を除けば、医療自体は世間一般の景気に大きく影響されないニーズが根付いており、また医療法54条により剰余金の配当を行うことが禁止されている非営利法人であるため剰余金が医療法人に内部留保として積み立てられやすい性質をもっています。
 そのほか、仕事の拠点である土地建物という有形資産を保有していたりすることも多く、結果として、医療法人という組織の税務上の評価額が高くなり、相続税も高くなる傾向があるのです。
 医療法人には、財団医療法人と社団医療法人の2種類がありますが、その多くは社団医療法人ですので、以下の説明は社団医療法人にかぎって行います。

第2、出資持分のない社団医療法人の場合
 2007年4月1日以降は、出資持分のある医療法人を新設できなくなりました。これは後述する、出資持分のある医療法人では、出資持分の評価額が高額になり持分所有者が亡くなったときに多額の相続税が発生したり、また持分所有者の相続人から持分の払い戻しを医療法人が求められることにより、医療法人の資金繰りが悪化し、本来の経営継続が困難となってしまう事態が続発したことを国が深刻視したことによります。 
 その相続対策として、2026年12月31日までの間に限り、持分あり医療法人が持分なし医療法人に移行するための計画を申請し、厚労省の認可を受けるという認定医療法人制度を利用することで、医療法人が同族経営を維持しつつ移行時の相続税や贈与税を非課税にして資金面の負担を軽減し事業承継を円滑にすすめることができると言われています。
 出資持分のない社団医療法人では、たとえ医療法人の代表者である医師が亡くなった場合も、持分の概念が存在しないため、医療法人の名義の財産は全て相続の対象から外されます。同時に、持分の概念がないため、医療法人が代表者の相続人から払戻請求を受ける心配もありません
 厚労省の移行計画認可には細かい条件は充足する必要がありますので、実際に手続を行う際は移行計画認可に詳しい税理士など専門家の協力を必ず経てください。たとえば、条件の1つには医療法人の出資者の全員が出資持分を放棄するというものがあります。
 持分なし社団医療法人で代表理事である医師が亡くなった場合に相続の対象となるのは、亡くなった代表理事名義の財産のみとなります。他方、持分なし医療法人であっても基金拠出型の場合には、代表者である医師が医療法人に無利息でお金を貸している格好になっている場合があります、その場合は持分なし医療法人に対する債権が相続の対象となります。
 とはいえ、持分なし医療法人の場合には、後述の持分あり医療法人に比べて、相続税の問題も払い戻しの問題も発生しないので、圧倒的にシンプルです。さりながら、持分なし医療法人は2025年時点でもいまだ社団医療法人全体の5割にのぼっていないという国の統計があります。

第3、出資持分のある社団医療法人の場合
 医療法人への出資者は、医療法人から脱退する際に出資持分の払戻請求権を取得します。また、もし医療法人を解散することになった暁には、残余財産の分配請求権を取得します。
 そのため、税務上も医療法人の出資持分は財産価値あるものとして相続税課税の対象とされています。医療法人の出資持分を相続税評価する場面では、無為無策だと相続税が巨額にのぼる可能性があります。医療法人は、一般企業法人と違って利益を累積した剰余金を配当することができず、医療機関の経営が好調であればそれだけ出資持分の評価額が高くなってしまうからです。
 また医療法人の出資持分は保有者である代表理事などの医師が亡くなった場合に相続の対象となります。出資者の死亡は医療法人の脱退事由に定款でなっていることが多く、出資者である代表理事の医師が亡くなった場合、医療機関の経営を承継しない一部の法定相続人が出資持分の法定相続分の払戻を請求してくることがあります。
 ところが、医療法人の評価を織りなす資産の多くは不動産や医療機関など現金化が困難なものが珍しくなく、出資持分の払戻を請求されたときにどのように現金を調達するかが大問題となり、病院経営に影響を及ぼすことが珍しくありません。
 相続税対策としては、出資持分ある医療法人それ自体の評価額を引き下げる(例えば、役員報酬を増やす。退職金を支給する)などがありますが、これは非上場株式の相続税対策に近似しています。いざ相続が発生したときの解決手法も、非上場の一般企業の相続問題に近似している面もありますので、法律家のチカラが必要となってきます。

菅藤法律事務所 菅藤 浩三

この記事の著者・運営者:菅藤法律事務所 菅藤 浩三

福岡を中心に九州エリアを対応しており、医療機関の法務支援に注力する現役の弁護士。
患者対応や労務問題、医療法規制への対応など、複雑化する医療現場の課題に対し、実務に即した助言を行っている。 日常的な相談からトラブル対応まで幅広く関与し、円滑な病院経営と働きやすい職場環境の実現をサポート。
医療現場への理解を強みに、地域医療を支えるパートナーとして迅速かつ誠実な対応を心がけている。
本サイトでは、実務経験に基づく信頼性の高い情報を発信しています。

弁護士歴(抜粋)
  1. 1992年司法試験合格
  2. 1995年福岡県弁護士会に弁護士登録
  3. 2004年整理回収機構 九州地区顧問 就任
  4. 2006年菅藤法律事務所を設立
公的役職歴(抜粋)
  1. 2010年~日本弁護士連合会「市民のための法教育委員会」副委員長
  2. 2010年~2013年福岡県弁護士会「法教育委員会」委員長
  3. 2014年~福岡県弁護士会「ホームページ運営委員会」委員長
  4. 2015年~福岡県弁護士会「交通事故委員会」委員
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