医療法務コラム
column
医療法務に強い弁護士|福岡
092-725-8777
[受付時間]平日午前9時~午後5時30分
医療法務コラム
column

目次
公立病院に勤務する薬剤師が、休診日の出番制勤務の際に、トイレ内で心筋梗塞で倒れて死亡したことについて、労災にいう業務起因性ありとは是認できないと説示した東京高判2014/4/22労判1090号5頁を取り上げます。公務員ですので公務起因性が欠如していると正式用語では指摘されます。

まず心筋梗塞や脳梗塞の発症について労災認定を受けるにはⅰ業務遂行性とⅱ業務起因性の両方の要件を充足する必要があります。
オフィスや作業場など、使用者の管理する施設にて仕事中に発症した場合は、業務遂行性を充足します。
業務遂行性を充足するかよく問題になるのは、たとえば自宅など使用者の管理する施設外で発症した場合ですが、自宅であってもテレワークなど業務に従事していた最中の発症であれば、業務遂行性が認められやすいといえます。
業務起因性ありというためには、条件関係だけでは足りず、業務と疾病との間に相当因果関係があることが必要であり、相当因果関係があるというためには、業務に疾病を招来する危険性が内在ないし随伴しており、当該疾病の発症が業務に内在ないし随伴する危険の現実化であるという関係に立つことが必要と指摘されており、裏返せば、業務に限らない日常生活に存在する一般的危険がたとえ現実化したとしてもほかに業務起因性を認めるべき事情が存在しない限り、業務に内在ないし随伴する危険の現実化にはあたらないと解されています(上記東京高判2014/4/22)。

そして脳疾患と心疾患については、業務起因性の認定基準を厚労省が公開しています「厚労省2001/9/14基発0914第1号」、ごくおおまかにいうと、発症に近接した時期における労働負荷、及び、長期間にわたる疲労の蓄積が判定の際に考慮されています。
発症前おおむね6か月間にわたって、著しく疲労が蓄積するような過重な業務にさらされていた場合
例)1か月間に100時間超または2~6か月間の平均が1か月あたり80時間超の時間外労働。なお、1か月あたり45時間を超えると、業務と発症との関連が徐々に強まっていく。
拘束時間が長い、休日のない連続勤務、不規則な勤務時間、出張が多い、日常的に大きな心理的プレッシャーを受けている、日常的に大きな身体的負荷がかかっている、作業環境が暑い寒いうるさい等過酷である。
発症前おおむね1週間における特に過重な業務にさらされていた場合(特に過重な業務かは、労働時間の長さのみで判断できない場合には、それ以外の精神的身体的負荷要因も含めて総合判断されます)
発症直前から発症前日までの間で、時間的場所的に何が起きたかを明確にできる異常な出来事にさらされた場合
例)緊張・興奮・恐怖・驚愕など強度の精神的負荷を引き起こす事態。急激で著しい身体的負荷を強いられる事態・急激で激しい作業環境の変化。

なお紹介した上記東京高判2014/4/22は業務起因性を否定した事案ですが、逆に、労災事故に該当する場合は、労災給付で補填されない、慰謝料や休業損害の20%の部分について、勤務先に対して労働契約法5条の安全配慮義務を怠った過失があるとして損害賠償責任を追及される場面があります。例えば、過剰な長時間労働を黙認し放任してしまっていた場合や、労働者の体調が悪いことを把握しながら業務軽減の配慮などを怠った場合がそれにあたります。