医療法務コラム
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第1、少子高齢化による労働力人口の減少を背景に飲食や店舗サービス業などあらゆる業種で求人難が普通になっていますが、その中でも医療機関で従事するスタッフは専門資格を必要とするため供給数自体に限りがあり求人に非常に苦労する状況が恒常化しています。
こうした中、藁にもすがる思いの医療機関に対し「求人サイトを使って無料で掲載できます」と一聴して救いの営業電話を採用担当事務宛に連絡する求人広告会社がいます。
第2、勧誘の手口は例えばこんな感じです。
「弊社の求人サイトに2週間無料で掲載できます。有料になる前に解約すれば費用はかかりません」営業担当者にとても親切に説明され、2週間無料の魅力にまどわされ、採用担当事務は院長の了解をえて契約申込書にサインし求人広告会社に申込書をFAXすることで契約成立となります。
ところが申し込みをしても一向に求人は入りません。よそでも状況は大きく変わらないので仕方ないか無料だしと考えていたころ、突然、求人広告会社から封書が届き、開封したら「無料掲載期間が経過し、有料の掲載に自動更新されています。1か月分の掲載料30万円を振り込んでください」と記載された通知が届いたのです。
慌てて求人広告会社に電話するも「自動更新されています、すでに無料期間が過ぎているので1か月分の掲載料を支払ってください」とのれんに腕押しです。
求人広告会社の担当が言うには、契約書には小さく自動更新条項が入っていたり、2週間無料のまま有効に解約するには〇日前までに所定の書式で連絡するなどやりかたに則している必要がある、そのように契約書に明記しているから契約は守ってもらわないといけない、というスタンスを変更する様子は見られません。
目当ての求人はないわ、お金だけ求人広告会社にとられるわ、踏んだり蹴ったりとなってしまいます。

第3、この手口が巧妙なのは、たとえ対面で契約書にサインする形式でなくても、FAXで申込書を送付するだけでも、そこに記された契約条件にお互いにしたがいますという契約が成立してしまうことです。さらに、求人募集という商行為であるために、消費者契約法など消費者保護の法律による救済が得られず、消費生活センターや国民生活センターといった機関が全く介入できないことが、この手口にしてやられた医療機関を困らせるのです。商行為の衣をかぶっていることから警察も全く介入しません残念ながら。
求人広告会社は「自動更新というのは契約書の中にキチンと明記されている。契約時に契約書をきちんと読んでいなかったという言い訳は通用しない。契約書にサインした時点で契約書に記された条項にはすべて同意したことになる」と突っぱねて、有料契約料金を支払わせようとするのです。
ひどいケースだと、営業DMにみせかけた封書で解約通知書ひながたを送ってくるという手口まであります、誤って破棄されることをねらったとしか考えらない手口です。
そして、実際に求人広告の反応がないことを責めると「継続しなければ求人広告の効果は検証できないのが当たり前だ。むしろ求人内容に魅力がないので反応が無いのだ」と開き直られたりします。

第4、無料求人広告の詐欺にあってしまった場合の対処法です。
1つめは、悪徳な求人広告会社の執拗な請求に屈して金銭を払ってはいけません。一度支払うと、たとえ詐欺であっても取り返すのは非常に困難です。実は、この詐欺手口を実行する求人広告会社は、勉強代として支払えなくもない絶妙な水準の金額を請求してきます、ただ応じてしまう医療機関がいる限りこの詐欺手口は撲滅されず、刑事事件にならないからと慢心して生き残るのですから。また、騙しやすい鴨リストに知らないうちに登録され、別の詐欺に流用されるリスクもあるのが現代社会のこわい所です。
2つめは、求人広告会社の詐欺手法に言い分に対抗するには、医療機関も法的知識を駆使する必要がありますので、泣き寝入りを避けるためにぜひとも弁護士に相談して下さい。詐欺的手法には断固として拒絶する姿勢が必要で、そのためには弁護士の助けを得ることが非常に有効なのです。
弁護士は、解約手段を制限することのアンフェア・契約時の説明が不十分であることを理由とする契約それ自体の不成立・医療機関の誤解を招く不適切な勧誘による錯誤を理由とする契約の取り消し、ときには公序良俗違反や詐欺を理由とする取消などをいろんな角度から戦っていきます。
無料求人広告の詐欺トラブルでは弁護士を就けて毅然とたたかうことで、ときに詐欺的請求それ自体をあきらめることもあります。最近では、裁判所にもこの手口が知られて、無料求人広告詐欺による料金請求を棄却する裁判例も散見されるようになりました。
第5、そもそもですが、契約を結ぶ際に申込書の記載事項をきちんと確認することで、つい詐欺被害に遭ってしまうリスクを減らすことはできるのですから、契約書の内容を確認する習慣をつけていくのが大事です。なお、事業の一環として締結される契約という理由で、クーリングオフによる救済は期待できませんので、きちんと詐欺的手法と戦うには弁護士の助力が不可欠な場面の1つです。